【研究部門】女子野球史 八木久仁子 氏
- 女子野球史
- 著者:八木久仁子 氏
- 出版:東京図書出版
野球文化學會委員・中村哲也氏 推薦文
八木氏は、2022年に『女子野球史』を東京図書出版から刊行し、明治から現代にいたるまでの日本における女子野球の歴史を一冊にまとめました。これまでに日本野球史に関する書籍は数多く出版されていますが、日本の女子野球の歴史を扱った書籍は決して多くありません。特に明治から現代までを一冊にまとめた書籍は存在せず、本書は日本で初めてあらわされた女子野球の通史と言えます。
本書は、第1部「明治大正の女学校野球」、第2部「昭和の女子プロ野球」、第3部「平成からの女子野球」の3部から構成され、男子に比して競技人口でも知名度でも大きく水をあけられて、一般の人にはほとんど知られていない日本の女子野球の歴史的展開を明らかにしています。
特に、競技人口・知名度が徐々に増大し、高校・大学・クラブチーム等の全国大会が開催されるようになった過程を明らかにした第3部は、先行研究がほとんど存在していないという現状を切り開いたとことに大きな意義があると思われます。また、本書の執筆者の八木氏自身が女子野球選手として活動し、チームの創設や活動の継続に悪戦苦闘した経験に裏打ちされた歴史叙述は、「女子による女子のための女子野球」を目指す筆者にしか書けないものであるように思われます。
男子の野球人口が減少する一方で、女子野球は競技人口・チーム数が増加し、その存在感が増大する現代の日本野球界の状況が、いかなる歴史的過程の上に成立したかを知るうえで、八木氏の著書は必読の文献と思われます。
よって、八木久仁子氏を第5回野球文化學會奨励賞(研究部門)に推薦いたします。