プロ野球の誕生Ⅰ・Ⅱ

プロ野球の誕生
プロ野球の誕生Ⅰ-表紙
プロ野球の誕生Ⅱ-表紙
  • プロ野球の誕生Ⅰ-迫りくる戦時体制と職業野球
  • プロ野球の誕生Ⅱ-リーグ元年の万華鏡
    • 著者:中西満貴典(両書ともに)
    • 出版:彩流社(両書ともに)

野球文化學會顧問・慶大名誉教授 池井 優氏より

創成期のプロ野球をとりあげた著書は、創設に参加した関係者の回想記をはじめかなり存在するが、授賞作はそれらと一線を画すものである。

「主題を探求するうえで、異なるジャンルの素材をモザイク状に配してながめるという」著者の意図が見事に生かされている。それは当時の新聞を最大限に活用することによって可能になった。

読売新聞、国民新聞、新愛知新聞、名古屋新聞などの記事をフルに活用し、当時の社会の出来事や人々の考え方をプロ野球の創設、発展とともに読者と共有する視点である。

季節の風景、「ファンのこえ」など当時の新聞記事の写真が掲載され活字では表せないものが提示される。

特に2冊目は「昭和11年」を過去の断面を追体験することで生じる興奮を読者と共有する姿勢がより強調され興味は倍加する。それにとどまらず著者は洲崎球場、分福球場などの跡地を自ら訪れ記念碑の写真を撮るなど今日につながる努力も惜しまない。

関係者の紹介と振り仮名、旧制中学の現高校名の紹介、「すめらみこと」の用語説明など極めて丁寧な姿勢も本書の価値を高めている。「季節の風景」、「時代の情景」、関係者が寄稿した「コラム」により読み物としてもあきることがない。研究部門賞授賞にふさわしい労作である。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA


2019年度第1回

前の記事

八百長リーグ
2020年度第2回

次の記事

早慶戦全記録