【活動部門】世紀の落球一「戦犯」と呼ばれた男たちのその後

  • 【活動部門】世紀の落球一「戦犯」と呼ばれた男たちのその後
    • 著者:澤宮優
    • 出版:中公新書ラクレ

野球文化學會委員・池井優氏 推薦文

『世紀の落球』は、これまでのプロ、アマの野球史において「ああ、あの落球」といつまで もファンに語られ、映像で再現されることもある。著者は「3つの落球」を取り上げる。

①2008年北京オリンピックの野球競技日本対アメリカの3位決定戦において G.G.佐藤が3回裏4-1日本リードの場面で先頭打者が打ったショート後の飛球をグラブに当てて落とし、この落球をきっかけにアメリカに同点に追いつかれ、結局試合に敗れ、銅メダルを獲れなかったケース

②1979年、夏の甲子園の高校野球3回戦、箕島対星稜、延長16回3-2、星稜あと1アウトで勝利の場面、箕島打者のファールフライを1塁手加藤直樹が転倒してとれず、命拾いした打者はホームラン、同点に追いついた箕島が18回に得点して勝ったケース

③1973年、阪神一巨人18回戦、2-1で阪神リード、9回表巨人の攻撃も2アウトランナー1塁、3塁、あと1アウトで阪神勝利の場面、しかし次打者のセンターへのハーフライナーを外野手池田純一が転倒、逆転され阪神が優勝を逃す一因となったケース

「落球」は想定外のさまざまな条件が重なって起こることもある。それを恨みながら言い訳にして逃げて生きるか、現実を真正面から受け止めて生きるか、2つの選択肢がある。著者が選んだのはいうまでもなく後者であり、強く生き抜いた選手に人生を追ってまとめたのが本書である。丹念に資料に当たり、本人は勿論関係者にインタビューしてまとめた本書は、失意の選手がどん底からいかに立ち直ったかを追った力作である。1986年のワールドシリーズで平凡なゴロを1塁手バックナーがトンネル、レッドソックスがワールド・チャンピオンを逃す「世紀のエラー」を犯した「張本人」を訪ねた池田にバックナーはいう。「人生にエラーはつきものだ。大事なことはそのあとをどう生きるかだ」。

打撃投手、三塁ベースコーチ、いぶし銀のベストナインなど陽の当たらない場所で懸命に 生きる人物に光を当て「人生の応援歌」を発表し続けたことを含め、推薦する次第である。

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