野球文化學會2025年度総会における会長あいさつ

 本日は、ご多用のところ、野球文化學會の2025年度総会にお集まりいただきまことにありがとうございます。

 総会の開催にあたり、学会を代表して一言ご挨拶申し上げます。

 詳細な事業報告は総会での審議の際に申し上げますが、2024年度の学会活動の主な取り組みについて2点ほどご報告いたします。

 まず、2025年1月26日(日)に第8回研究大会を挙行いたしました。第2部シンポジウムは2025年が東京六大学野球連盟の結成から100年、そして2026年が明治神宮野球場の開場から100年という節目の年を迎えることを記念して「明治神宮野球場と野球文化の1世紀--大学野球の聖地」と題して行われました。2023年度に阪神甲子園球場の開場100年を記念して第2部のシンポジウムを開催したことに続いて、今回もこのような記念の年を祝う研究大会を行えたのは、ひとえに会員各位の尽力のたまものであり、深謝いたします。それとともに、日本において野球の歴史を着実に積み重ねてきた先人の労苦に思いを致す次第です。

 また、2024年7月31日(水)には学会誌『ベースボーロジー』第17号を刊行いたしました。毎号、編集委員長である吉田勝光副会長および編集委員を担当する理事の努力によって『ベースボーロジー』が刊行されていることは、野球文化の発展への寄与という点において重要であります。それとともに、会員各位の日々の研究活動の発表の場として、今後もさらに門戸を広げてゆくことを期待するところです。

さて、これまでも折に触れて申し上げている通り、学会の創立者で初代代表幹事でもある諸岡達一顧問は、学会の理念として「ベースボーロジー宣言」を提唱し、「野球を人類不朽の文化とし、学問としての野球を確立する」ことを提起されました。1999年の学会の設立に際して示された「ベースボーロジー宣言」は、今なお揺るがぬ意味を持つとともに、これからも学会の諸活動の基礎としてより重要な位置を占めることになるでしょう。

 ところで、去る6月3日(火)、長嶋茂雄さんが逝去されました。選手としての傑出した成績と、監督として2度にわたり日本シリーズで優勝した実績は、長嶋さんの野球人としての偉大さを雄弁に物語ります。また、1959年は『週刊少年マガジン』と『週刊少年サンデー』という漫画雑誌が創刊され、日本の漫画界は新たな時代を迎えました。長嶋さんは『週刊少年サンデー』の創刊号である1959年4月5日号と『週刊少年マガジン』の創刊第2号である1959年4月2日号の表紙に登場しました。今でこそ週刊漫画雑誌にスポーツ選手や芸能人の写真が用いられることはごく当たり前のことです。しかしながら、『週刊少年マガジン』と『週刊少年サンデー』は日本においてはじめて刊行された週刊の少年向け漫画雑誌であり、当時としては最先端の媒体でもありました。そのような雑誌に長嶋さんの姿があったことは、野球選手として傑出していただけでなく、子どもたちからも仰ぎ見られる存在であったことを改めてわれわれに伝えます。また、文化としての野球を考えるとき、野球選手がその時代の最先端の文物とどのようにかかわりあっていたかを、印象深く教えるものでもあります。今後も、野球はさらに発展を続け、文化とも様々なかかわりかたを持つことになります。その際、長嶋さんが表紙に描かれるという形で最新の文化の発展の一翼を担ったことは、野球文化を研究する上で大きな示唆を与えると言えるでしょう。

 最後に、本日の総会の開催に際して、公私ともご多用のところ、第2部のトークショーへの登壇を快諾された飯田哲也氏に御礼申し上げます。日々の学会運営や、研究大会の開催に献身的に取り組まれた吉田勝光副会長、武田主税副会長、総会の開催に際し諸事の手配を担当された筆谷敏正理事ならびに役員各位の尽力に改めて深甚なる謝意を表します。

そして、今後も皆様が野球文化のさらなる発展に向け、野球文化學會を活動の場として大いに活用されることを願い、私からのあいさつといたします。

令和7年6月8日

野球文化學會会長 鈴村裕輔

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